思い出

こんにちは。バイオリンの木村です。

デビューコンサートにお越し下さった皆様

暑い中本当に有り難うございました。

あれからもう1ヶ月以上もたつのですね。

メンバーもみな、それぞれの国に帰り新しいシーズンが始まっています。

日本の夏はまだまだ残暑が厳しいのでしょうか。

カナダは秋の気配が深まって来ています。

これから長い冬が来るのかと思うと、ちょっとどんよりです。

 

さて、長い間ブログを放っていましたが

夏のあのデビューコンサートの翌日

カナダに帰国して、とある仕事で弦楽合奏をやる機会がありました。

カルテットの曲を弦楽合奏に編曲したものでしたが

ほとんどの人がカルテットの方が楽しいと言うのを横目で

私は絶対弦楽合奏版の方が楽しい!と密かに思っていました。

 

私にとって、弦楽合奏というのは、まあ思い出もありますが

それほど魅力のあるものなのです。

何がそこまで私を魅了するのかは、自分でもよくわかりませんが

あの重厚なサウンドでしょうか。

または、繊細なサウンドでしょうか。

 

オーケストラの曲の中にも

弦楽器だけで演奏する楽章があったりしますが

私たちのグループのような編成の奏でるサウンドには

何かこう、魔法のようなキラキラ輝く魅力があるように思います。

オーケストラでは50人くらいの弦楽器奏者がいるわけですが

考えてみれば、そのサウンドの方が音に厚みはあるわけです。

重厚さと音の厚みとは違うものなんだと私は考えています。

多分、少人数でも、全ての楽器がうまくブレンドされた時の音の質でしょう。

 

さて、私が弦楽合奏に取り憑かれたのは学生時代。

コントラバスの出原君から一緒に弦楽合奏団を作らないか

という誘いに、まんまと乗ってしまったからでした。

大学に入ったばかりで、それまでアマチュアのオーケストラに所属はしていたものの

弦楽合奏とは、オケに管楽器のないもの、くらいにしか思っていませんでした。

その頃の私はオーケストラが大好きで、卒業したら絶対にオケに入ると心に誓っていました。

やりたがりの私は、すぐにやるやる!と返事をしました。

そして、弦楽合奏の数々の名曲に出会って行ったわけです。

始めてドボルザークの弦楽セレナーデを聴いたときは

世の中にこんなに美しい響きってあるの?と思いました。

管楽器がないだけ?本当にそれだけなんだろうか。

 

それから私たちは、若い頃にしか出来ない無茶、無謀を思う存分やらかし

弦楽合奏の名曲中の名曲を数々弾いたのでした。

中にはカルテットの弦楽合奏編曲版もありました。

でも、私には、やはり弦楽合奏で演奏する方が魅力的に思われました。

 

そして、私たちはあの、バルトークをやろうと最大の冒険に出た訳です。

それが、出原君と私が一緒に学生時代を通してやった弦楽合奏の最後のコンサートでした。

あのバイオリンのソロの部分がかっこよくて

でも、その頃の私はハンガリーなどという国には行ったこともなく

ヨーロッパを旅行したこともなかったような田舎の子でしたから

どんな雰囲気で弾けばいいのかなんて分かりませんでした。

バルトーク特有のあのリズムには、ハンガリーの言葉が絡んでいることなど

私の知識にはなかったですし、バルトークがでっかい録音機を持ち歩いて

ハンガリーの色々な田舎のフォークソングを録音して

それを色々な曲に使っていたことなど、これっぽっちも考えませんでした。

 

私は感覚人間で、感じたままを表現したい人間で

例えば、作曲家がその曲を作曲した背景などを知れば知る程

そのときの感情が伝わって来て(と本人が感じているだけ!)

苦しくなって弾けなくなったりします。

なので、その頃はなるべく何も知らずに弾く事を好んでいました。

 

ある日のリハーサル、3楽章をあわせているときに

急にお腹が痛くなってたまらなくなってきました。

どこがどう痛いと言われても答えようがないような感じで

薬を飲んでもおさまらず、皆はもう帰ってもいいよと言ってくれたのですが

3楽章にはバイオリンのソロの部分が沢山あって

それを練習せずには帰れない!と、意地をはって練習をしていたのです。

多分、顔色青くかなり怖い形相で弾いていたのではないかと思いますが

それが結果的にそごい気迫になって、皆が良かったわ、今の!

と言い出したのです。

それ以来、バルトークを弾いたり聴いたりするとき

3楽章が来ると、なんとなくお腹が痛くなりそうな気がするのは気のせいですが

そのときは、そうか、鬼気迫ったように弾けばかっこいいんだ

なんて思っていました。

 

それから20数年という月日が流れ、その間にも何度かバルトークを演奏しましたが

今イチ自分では何かこんな感じじゃないような気がすると思っていました。

最初の印象が鬼気迫るものとして体に残ってしまったので

若いときに体にしみついたその印象を変えるのは結構難しい事だったようです。

今回、バルトークをやらないかということになったとき

自分なりには、”リベンジ” だ!と思いました。

 

この20数年の間に、何度かハンガリーを訪れる機会もあり

カナダに留学したのは、ハンガリー人の先生に習うためでもあり

夏にハンガリーで受けた講習会で、先生が演奏されたバルトークに

そうか、ハンガリーのこのリズムってこうなるんだ〜と

目から鱗のような体験をしたり

そんな ”Japanese Bon Dance" 見たいに弾くなと言われて困ってしまったり

きちんとした枠組みの中で自由に表現することがどれだけ大事なことかを教わったり

作曲者の背景を読んでも、そこまで苦しくならずにすむ方法を見つけたり

自分の中で多少は変化があっただろうと思っていました。

 

勉強しましたよ、今回は。

楽譜やスコアを眺めて色々と。

でも、結果は。。。。

やっぱり激しく弾いてしまいました(笑)

鬼気迫ってはいなかったかもしれませんが、結構激しく。。。

やはり、これが私の持ち味のようです。

善し悪しは別にして、私の中では、あの部分はどうしても

激しく弾きたいという何かがあるのでしょう。

リベンジになったのかどうかはわかりませんが

素晴らしい仲間と出会えて、ああ、やっと好きなバルトークが出来上がった

そんな気持ちで一杯でした。

 

多分、もう一度やったら、また違った味になるのかもしれません。

でも、私は弾いていてとてもとても楽しかった。

弾いてる人が楽しくなければ聴いてる人も楽しくない!

私はいつもそう思って舞台に立っています。

これからも、私はどんどん楽しんで弦楽合奏を作り上げて行きたい。

そして、100歳くらいになって(いつまで弾く気?)もうええで〜となったときに

弦楽合奏の思い出が一杯一杯で溢れ出て困ってしまうくらい

沢山の弦楽合奏曲を弾いて、皆さんにお届けしたいなあと思います。

今後ともどうぞよろしくお願いします!

 

しかし、私文章まとめるの下手ですね。。。